Air

名前はあちこちで見かけつつも、スパイラル・ライフ含めて未聴だったが、8月辺りの音楽雑誌に「ヘヴィロック版AORのような感じで……」みたいなサマーソニックのライヴ評が載っていたのを読んでから気になっていた。その書き手はヘヴィロック版AORと言うのをネガティヴな意味合い(刺激とか焦燥感が少ないとか、そういう感じ)で使っていたようだが、逆にその評価に惹かれるところがあった。AOR、大人のロックって事は、意図不鮮明な実験や形式的な前衛に走ったりしないだろうし、詰めの甘さや未熟さを初期衝動のような言葉で誤魔化すところが無いのだろう、と思えたので。
Airをその内聴こう、と思っていた事はつい昨日まで忘れていたが、今日レンタル屋でたまたまそれを思い出せたのでベスト盤「Best Not Best」を借りてきて聴いた。期待した通りの、良く練れてポップで高機能なロック。アコースティックな感触の中に何となくプラスティックな人工的手触りがあるメロウな曲、いかにもなラップロックだがセンチメンタルなメロディ運びが見え隠れする曲、と大きく分けて2タイプの曲があるようだが、どちらもアレンジに遊び心と言うか聴き手の集中力を散らさない仕掛けがあり、なおかつ音圧やギミックに頼りっ放しにならないメロディの良さも備わっているので、メロウな曲は勿論、さほど好みではないラップロックの方も十分に楽しめた。同時代性とかオリジナリティとかにはあまり興味が無い方なので、単純に曲の良さを感じ取れるベスト盤をまず初手に選んだのは正解だったと思う。
ベストと言う事で時期はバラけているが、最近の曲については実にいい感じの成熟と余裕を感じさせるものが多く、その意味でヘヴィロック版AORと言う評価はごく的確だったと思う。すごく気に入ったので、少しずつアルバムを聴いていくつもり。「夏の色を探しに」と「24 Years Old(from "All Along Air" ver)」が特にいい。逆に、「Kids Are Alright」のようなメロコア風の曲はやはり苦手。